風営法専門の行政書士が、風俗営業1号の「接待」の判断基準を解説

風営法での「接待」は、一般的な接待の意味とは違う!

一般的には、相手をもてなす行為を「接待」などと行っておりますが、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」)における接待は風俗営業独特の解釈がなされています。

法律(風営法第2条第3項)では下記のように規定されています。

この法律において「接待」とは、歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすことをいう。

この「接待」は風俗営業1号に含まれる行為です。


風俗営業1号は、
キャバクラ、ガールズバー、スナックなどの

お店の女の子(ホストは男性)がお客さんとイチャついてもてなし、飲食を提供する営業

のことを言います。


そして
風俗営業は全部で5種類ありますが、その5種類の中で 「接待」があるのはこの風俗営業1号だけです 

さて、上記の「接待」についての説明はかなりふわふわして具体的ではないですよね。
しっかりしたイメージがわきますでしょうか???

この「接待」については、具体的な解釈は「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準(以下「解釈運用基準」)」において説明がなされています。

以下では「解釈運用基準」に基づいて
接待についてご案内していきます。

風営法での「接待」の判断基準(風営法解釈運用基準)

「解釈運用基準」では
「接待=歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」とありますが、、
例を挙げるとに言うと以下の通りです。

「営業者、従業者等との会話やサービス等慰安歓楽を期待して来店する客に対して、その気持ちに応えるため 営業者側の積極的な行為 として相手を特定して 一定の興趣 を添える会話やサービス等を行うことをいう」


要するに、、、、

「キャストと『話したい!』『楽しく過ごしたい!』『イチャイチャしたい!』という気持ちのお客さん」がお店にやってきて、

そのお客さんに対してキャストが積極的に、お客さんをその気にさせるような、自分を好きになってもらうような会話やお酒を注いであげたり、一緒に歌を歌ってあげるなどのサービスをしてあげる、、、、

と言ったろことでしょうか。。。

言い換えれば
「特定の客又は客のグループに対して単なる飲食行為に通常伴う役務の提供を超える程度の会話やサービス行為等を行うことである。」
ということです。


 「慰安」とは「労をねぎらい、心を慰める」ことを言います。

 「歓楽」とは「喜び楽しむこと、気持ちよく楽しむこと、快楽など」を言います。

 「興趣」とは「味わい深いおもしろみ」のことを言います。


風営法では「誰が接待を行うと」風俗営業1号に該当するのか

さてさて、
「誰が接待を行うと」風俗営業許可が必要になるのか、、、
というのはとても重要です。


ですから解釈運用基準でもこのことについて触れています。

「通常の場合、接待を行うのは、『営業者やその雇用しているものが』多いが、それに限らず『料理店で芸者が接待する場合』『旅館・ホテル等でバンケットクラブのホステスが接待する場合』『営業者と明示又は黙示の契約・了解の下に客を装ったものが接待する場合』等を含み、女給、中居、接待婦等その名称のいかんを問うものではない。また、接待は、通常は異性によることが多いが、それに限られるものではない。」と規定しています。

ということで、ここでは、、、、、

 お店の人でなくても「芸者さん」「ホステスさん(コンパニオンさん)」「お客さんとい設定で、接待をする人」なんかは全て「接待をする主体(接待する人)」に該当するし、接待する人の名前は関係ないよ。 

と言っています。

要するに
上記の方々(「芸者さん」「ホステスさん(コンパニオンさん)」「お客さんとい設定で、接待をする人」)が提供する接待は、「お店側の積極的な行為」というわけです。

こんな時はお店側の積極的な行為=「接待」になるのだろうか??

ここで一つ事例を。
例えば、、、、「お店の従業員ではないコンパニオン」が呼ばれて接待が行われているとします。こんなことはよくあることではないでしょうか?? 

こんな時はこの飲食店は「風俗営業1号許可」を取得する必要があるのでしょうか??

このケースでは
お店の「営業者側の積極的な行為」がポイントになります。

もし お店とコンパニオンとの間に契約等があり、飲食店側がそのコンパニオンを呼ぶ等「飲食店の積極的な関与がある」場合には、その飲食店は風俗営業1号許可を取得る必要があります 

しかし、
そのコンパニオンを お客様が呼んだ場合には、
飲食店側が積極的に関与しているわけではないので風俗営業1号には該当しません 


そうすると

「飲食店側で、『お客様がコンパニオンを呼んだように』装えばいいのでは・・・」

という考えが思い浮かぶはずです。


しかし
このような考えで飲食店側が積極的に風俗営業1号を行うと
それなりに危険があります。

どのような危険か・・・


例えば「密告・チクリ」です。


こういった、いわゆる「無許可営業」がバレるケースで一番多いのは隣近所や風俗営業1号許可を取得した者から警察への報告です。また、こういった行為を繰り返したことに気づいた反社会的勢力からの圧力もあったりします。


そして結局のところ、積極的に風俗営業1号をやっていないと見せかけても、「脱法行為」として判断するのは警察等の行政です

いくら「私たちが積極的に風俗営業1号をやっているわけではありませんよ」といっても調査の結果「無許可で風俗営業1号をやっている」と判断されてしまえばそれまでです。

そして大きなリスクが「無許可営業への罰則」です。
 最悪の場合は「2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金またはその併科」 という重い罰がありますので十分お気をつけください。

風俗営業1号における接待の「6つの判断基準」

キャバクラ、ガールズバー、スナックなどの風俗営業1号で行われる接待を判断するとき、上記の「一定の興趣(=味わいの深いおもしろみ)」がポイントとなりますが、この「一定の興趣」には下記のような行為が該当します。

 下記のような行為がある場合やそれに近い行為がある場合には、その行為は「接待」に該当する可能性が高い ですし、そのような状況があるのに風俗営業1号許可がない場合には「風俗営業1号許可の手続き」の準備をした方が良いでしょう。

・談笑
・お酌等 
・ショー等
・歌唱等
・ダンス
・遊戯等
・その他

以下順々にご案内していきます。

談笑・お酌等

「特定少数の客の近くにはべり(=そばにいる、控える)、継続して、談笑の相手となったり、酒等の飲食物を提供したりする行為」

は「接待」にあたります。


これに対して、以下の行為は接待に該当しません。

・お酌をしたり水割りを作るが速やかにその場を立ち去る行為

・お客さんの後方で待機し、又はカウンター内で単にお客さんの注文に応じて酒類等を提供するだけの行為

・上記に付随して遮光切れ以上の挨拶を交わしたり、若干の世間話をしたりする程度の行為

 「特定のお客様のそばにいて、話し相手になる」という行為がポイントになります 
お客様に呼ばれるまでは他の場所で待機しているのであれば大丈夫です。

以前、あるお客様から「そんなに長くならない間(3~5分ほど)お客様のそばにいて、かわるがわる女の子が交代していく」場合には接待に該当しないのでは??という質問がありましたが、「何分まで大丈夫か」という規定は風営法には一切ありません。


上記で言えば「お酌をしたり水割りを作るが速やかにその場を立ち去る行為」「客の後方で待機し、又はカウンター内で単に客の注文に応じて酒類等を提供するだけの行為」に該当するかがポイントとなります。

「お酌をしたり水割りを作るが、意味もなくその場にいてお客様の話し相手になっている」のであれば「接待だよ」と言われる可能性はあると思います。その行為が「営業者側の積極的な行為」によるものであれば特に気をつけないといけません。

カウンター越しはそもそも特定のお客様のそばにいないので「風営法上の接待」に該当しないのでは?

ショー等

「特定少数の客に対して、もっぱらその客の用に供している客室又は、客室内の区画された場所において、ショー、歌舞音曲(=歌と踊りと音楽、華美な遊芸)とを見せ、又は聴かせる行為」

は接待にあたります。

これに対して、ホテルのディナーショーのように不特定多数のお客さんに対し同時に、ショー、歌舞音曲等を見せ、又は聴かせる行為は接待には当たりません。

ここでも「特定のお客様」というキーワードが出てきました。
そして特定のお客様に「ショー」などを見る行為などは「歓楽的雰囲気を醸し出す行為」ということになります。

歌唱等

「特定少数の客の近くにはべり(=そばにいる、控える)、その客に対して歌うことを勧奨し(=歌いましょう!、歌って!)、もしくはその客の歌に手拍子をとり、拍手をし、もしくは褒めはやす行為又は客と一緒に歌う行為」

は接待にあたります。


これに対して、お客さんの近くに位置せず、
不特定の客に対し歌うことを勧奨し、又は不特定の客の歌に対し拍手を、もしくは褒めはやす行為、不特定の客からカラオケの準備の依頼を受ける行為又は歌の伴奏のため楽器を演奏する行為等は、接待には当たりません。

キーワード「特定のお客様」とデュエットする行為は「接待」を構成する重要な要素です。そして特定のお客様のそばにいて盛り上げる行為も「接待」に該当します。

ダンス

「特定の客の相手となって、その身体に接触しながら、当該客にダンスをさせる行為」

は接待にあたります。

また、客の身体に接触しない場合であっても、特定商数の客の近くに位置し、継続してその客と一緒に踊る行為は、接待にあたります。


ただし、ダンスを教授する十分な能力を有する者が、第んすの技能及び知識を修得させることを目的として客にダンスを教授する行為は、接待に当たりません。

キーワード「特定のお客様」と一緒にダンスを踊る行為は「接待行為」に該当します。
もちろんダンス教室であるようなダンスのレッスンは接待に対応しません。

遊戯等

特定少数の客とともに、遊戯、ゲーム、競技等を行う行為は、接待にあたります。


これに対して、客一人で又は客同士で、遊戯、ゲーム、競技等を行わせる行為は、直ちに接待に当たるとは言えません。

キーワード「特定のお客様」とともに行うゲームなどは「接待」に該当します。
お客様がお気に入りの女の子とゲームをして盛り上がる、それは普通の接客以上の、「歓楽的雰囲気」を醸し出しているはずです。

その他

「客と身体を密着させる」「手を握る」など「客の身体に接触する行為」は、接待にあたります。

ただし、社交儀礼上の握手、酔いつぶれてるお客様の解放のために必要な限度で行われる接触等は、接待に当たりません。

また、客の口許まで飲食物を差し出し、客に飲食させる行為も接待にあたります。
これに対して、単に飲食物を運搬し、又は食器を片付ける行為、客の荷物、コート等を預かる行為等は、接待に当たりません。

接待にお店や性別は関係ない

ここで、「忘れがちの基本」を、、、

キャバクラ、スナックは「接待がある」というイメージがありますが、
接待を行わないのであれば「キャバクラ」「スナック」と店名に入っていたとしても風俗営業1号許可を取得する理由はありません。

逆に料亭であってもメイド喫茶であっても小料理屋であっても「接待がある」のであれば風俗営業1号許可を取得しなくてはいけません。

また「接待」というと女性のイメージが強いですが、もちろん「男性による接待」があるのなら「風俗営業1号許可が必要」です。
例えば「ホストクラブ」ですよね。

その他
「男性から男性への接待」「女性から女性への接待」ももちろん「風俗営業1号許可が必要」です。


風営法での「接待」まとめ

いかがだったでしょうか?

これから風俗営業の1号営業を行うことを考える方、すでに行われる方にとって接待行為の解釈はまだ曖昧なところもあるのではないでしょうか?

行政書士事務所ネクストライフが接待についてお客様に話すときには以下について注意を払ってくださいとお話ししています。

・特定のお客様のご対応をする
・お客様の身体に接触
・密着する

解釈運用基準において語られている接待については
上記2つが基本となっていることが多いです。

また「密着する」ということで
「お客さまを特定する行為」「お客様に接触する行為」がより深まりますので、
私たちはこれら「3つ」の点について特にご注意いただくようご案内しています。

ただ、、、

風俗営業1号は、法令を守っていれば立派な事業です。

ですから接待をちゃんと理解した上で
接待行為があるならば、風営法にもとづき「風俗営業1号許可」を取得する、
取得しないのであれば、接待行為に当たる行為を行わない、
そのようにして営業を行えばよいのです。


行政書士事務所ネクストライフでは、お悩み、ご相談にいつでもご対応しております。また無許可営業のお店が風俗営業許可を取得する場合にも迅速にご対応しております。お気軽にご連絡ください。

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